名古屋市中心部を貫く、久屋大通り沿いの超高層マンションプロジェクト。
敷地は南北2面道路に面する、旗竿状の形状をしている。自動車は敷地北側の道路からアクセスし、人と自転車は、南側の旗竿状の“露地”を通って導かれる。‘露地’は幅が7m、長さが30m程あり、そこに多様な樹種の高木・中低木、煉瓦透かし積みの灯籠、壁泉とカスケード、水盤、大型テラコッタを組み合わせた透かし塀、陶芸作家:河本太郎氏のオブジェなど、様々な要素を配置した。“露地”を進むことで、都会の塵芥を払い清め、穏やかな気持ちで我が家に辿り着く効果を狙ったものである。
エントランスラウンジのインテリアは、フォワードスタイルの南部氏とのコラボレーションにより、高質で、オーソドックスな空間に仕立てられた。インテリアや外観の随所に散りばめられたテラコッタ、煉瓦、タイルなどが、名古屋らしい、本物の焼き物の素材感を醸し出している。
名古屋市の高級住宅地である八事地区に建設された、マンションプロジェクト。2009年に竣工したプラウド川名山から、50m程坂を下った場所に位置する。このあたりは起伏に富んだ住宅地であるため、坂道に面して自然石の擁壁が連なり、それらがこの地域全体の景観を形作っている。今回の敷地も南側の前面道路に対して、南傾斜地となっていたため、敷地周囲に自然石石垣を巡らし、御影石貼りの基壇、せっ器タイルと磁器質タイルの凹凸のある外壁、煉瓦透かし積みとロートアイアン手摺などでファサードを構成した。
エントランスからラウンジに掛けて、タップリとしたスペースを確保し、芦野石の透かし積みをメインにした“石”の空間とした。エントランスの耐候性鋼板サッシュ越しに、芦野石の透かし積みで囲まれたミニラウンジが垣間見え、その傍らに一段下がった花梨フローリングのメインラウンジが広がる。
メインラウンジは、南からロートアイアングリルを通して自然光が降り注ぐ、とても気持ちに良い空間である。そこに、今回初めての試みである、白色の磁器質タイル(大和窯業:オリガミタイル)を使った光壁を設えた。また、芦野石壁には3つの展示ケースを穿ち、陶芸作家:長江重和氏の繊細なオブジェを飾った。
敷地周辺に多くみられる自然石の石垣を建物のインテリアにも取り込み、野趣溢れる、素材感を大切にした、安定感と風格を感じさせる建物が実現出来たように思う。
● 関連トピックス
南に相模灘、北に大室山をのぞむ国立公園内の斜面地に設計した住宅。ざっくりとしたスペイン瓦の大屋根と、米松の天秤梁で支える車寄せの屋根が、別荘地ならではの大らかなシルエットを作り出している。
本物の自然素材をふんだんに用い、吟味されたディテールと確かな職人技により建物内外を作り込んだ。錫とステンレスを混ぜた金属左官(ぬり貫)による玄関扉や木の葉をあしらったロートアイアン製の面格子(よし与工房)は、この住宅に求められた「重量感」と「安心感」を象徴している。
内壁は珪藻漆喰の左官塗りとした。キッチンからダイニングにかけての壁面は河津桜をテーマとした左官仕上げ(ぬり貫)を施し外の「桜」の景を生活空間に引き込んだ。天井やフローリング、腰壁は無垢の木を「柿渋」で仕上げるなど健康に配慮しつつ、時間と共に味わいが増すことを意識した。
また建物の各部にユニバーサルデザインを生かし将来の住み心地を見越した計画としている。高断熱高気密を確保し床暖房と冷暖房空調を施しつつ、サッシュ面や部屋の出入り口には、簾戸や障子、板戸を併用することで、視線や動線、風通しを融通無碍に制御できるようにして四季を通じた住み心地にこだわった。
武蔵野台地の南斜面にあたる住宅地に計画されたマンションプロジェクト。接道部にあたるパブリックな「外の庭」と、コの字型配棟で囲まれたプライベートな「内の庭」をそれぞれ作り込み、2つの庭を繋ぐエントランスホールを奥行きのある一続きの空間としてデザインした。
「外の庭」は自然石野面積みの奥に武蔵野の里山を感じる雑木の疎林を作った。また斜面の上側である「内の庭」は高地の清冽な静けさを湛えるような「せせらぎ」のあるランドスケープとした。それぞれの庭とエントランスホールとの間は、建物全体のデザインモチーフである「花脈」をあしらったロートアイアンの格子扉をおくことにより、視線を程良く仕切りつつ連続させた。
いわゆる都心とは一線を画す世田谷ならではの上質な佇まいを目指し、重量感と軽快感が小気味良い建築とした。
● 関連トピックス
緑豊かな北浦和公園に近接した住宅地におけるマンションプロジェクト。古いお屋敷であった敷地内には樹齢80年以上と思われる既存の「赤松」が残されており、取り残されたかのような赤松と新しい建物とが一体となった「新たな風景」を生み出すことを目指した。そのために、松を生かせるように建物とアプローチの配置を見定め、赤松の樹皮が持つ独特の風合い・色合いとマッチさせた外壁タイル、ロートアイアンの手摺や衝立、大型ブロック積みの衝立などを吟味して取り合わせた。
ランドスケープは、北浦和の「原風景」である中山道にならい松並木の街道から母家をぬけて竹林の中庭に至る構成を、エントランスから中庭に至る道行きの構成に取り込んだ。
今まで受け継がれた「赤松の記憶」を継承しつつ地域に新たなランドマークを作り出した。
● 関連トピックス
横濱天王町は、最先端のビジネスが集積した横浜ビジネスパークと、昔ながらの風情を持つ松原商店街など、モダンとレトロが混在した街。敷地北側は交通量の多い環状1号線に面し、南側は木造を主体とした低層の住宅街に接している。この背反する要素を併せ持つ敷地において、できる限り、ヒューマンスケールを意識しながらデザイン監修に取り組んだ。
南側のメインエントランス側には、耐候性鋼板を骨組みとし、ガラスを架けた小庇を伸ばし、住戸の専用庭には、再生木ルーバーのフェンスとパーゴラを設えた。それにより、高層マンションの持つスケールを幾らかでも緩和できたのではないかと考えている。
エントランスホールは細長い空間であるが、耐候性鋼材で作った照明柱でラウンジを柔らかに区切り、MDFの造作家具(イノウエインダストリィズ)、アートガラス(エー・ジー・クルー)やパンメタルとタイルのアート(ぬり貫)などを組み合わせ、ちょっとお洒落な雰囲気とした。
● 関連トピックス
かつて武家町であった由緒ある土地柄に計画されたマンションプロジェクト。石垣や石畳、左官や黒板の塀など、表情豊かな街並みが広がる敷地周辺には、その昔、多くの文人が居を構え、中高年に人気の神楽坂にも近い。また、外国人居住者も多く、フランス文化も融和されたハイカラな雰囲気が漂っている。
そこで、歴史ある風格が息づく風景、高い文化性を有する土地柄に相応しい住まい作りを目指した。唯一道路に面している北側のファサードは、少し硬めの“構え”のデザイン。エントランスホールとラウンジのインテリアは、広々とした一体的な空間とし、煉瓦透かし積み(大和窯業)やアートガラス(エー・ジー・クルー)越しの柔らかな自然光を北側から取り入れている。ラウンジに設えた“パンメタルの鏝絵” (ぬり貫)は、瓦左官の壁、花梨フローリングの床と相まって、オリジナリティー溢れる空間を醸し出している。
● 関連トピックス
今、ファミリー層に大人気の田園都市線たまプラーザ駅から歩いて数分、小高い丘の上にあるマンションプロジェクト。敷地南側に田園都市線の線路が走っているが、10メートル程下であるため、全く気にならない。むしろ、南側線路越しの公園への眺望が開け、子育て世代には最適の居住環境であるといえる。
バルコニー端部のルーバーやプラントボックス、北側階段手摺などに再生木を多用し、花作りなどを楽しめる雰囲気作りを試みた。プライバシー確保のためのアングルを組み合わせたロートアイアン手摺(よし与工房)、再生木色の戸境壁などにより、明るく、風通しのよいバルコニーが実現できたように思う。
また、この計画では、2層分の天井高さを持つエントランス棟を独立して設けることが出来たため、煉瓦透かし積みの照明、トップサイドライトと間接照明、北側の坪庭を眺める下窓など、特徴のあるお迎え空間をデザインした。
● 関連トピックス
JR大森駅から徒歩2分という、恵まれた立地に建つ中層マンション。
当初、敷地には、築100年を超える由緒ある洋館と和風の平屋が建てられていた。
そのため、都会の喧騒の中にあっても静かな暮らしが実現できるように“大森山王-和・美住まい”というコンセプトを作った。
外壁は落ち着いた黒と利休鼠色のせっ器質タイル(織部製陶)、エントランスキャノピーには金属左官パンメタル(ぬり貫)を施した。
住棟を貫く光庭には、以前のお宅にあった蹲を据え、お住まいになる方々がエントランスを通る毎に、下窓越しに眺められるようにした。
ラウンジに面する道路側の窓には、鉛線を使用しないモダンなステンドガラス:アートガラス(エー・ジー・クルー)を嵌め、外を歩く人達からの視線をカットしている。
さらに、ラウンジの廊下側には、芦野石透かし積み(白井石材)の間仕切り壁を設え、家具設置スペースの落ち着きを確保している。
また、各階のエレベーターホールには、階数表示板とアートを兼ねたオブジェ(竹中製作所+ぬり貫)を設置し、華やかさを演出した。
卓越した技量を持つ職人達の手業によって、以前の住宅が持っていた“洗練された、上質な暮らし”が継承出来たのではないかと考えている。
● 関連トピックス
→2010.12.13 パークコート山王二丁目が竣工しました。(その2)
→2010.06.01 パークコート山王二丁目が竣工しました。(その1)
大阪市唯一の高台、上町台地に位置する集合住宅。大阪城が程近く、かつて難波宮が築かれたこの歴史ある高台に、「時」の積み重なりである「地層」が建ち現れるような高層住宅を考えた。それは、周囲を睥睨するような鉄とガラスによる尖ったタワーではなく、言うなれば台地に根差した望楼であり、塗り壁やせっ器質タイルで仕上げられた「土の超高層」である。
「住まい」とは人を収容する箱ではなく、家族の歴史や想い出を投影しつつ時間と共に味わいを深める「器」のようなものである。であるならば、自然で素朴な仕上げ材料を吟味すること、あるいは季節の移ろいを意識させる坪庭やそれを映し込む水の演出など、経過する時間の重なりを建築に取り込むことが重要である。
アプローチに敷き並べた50センチ角の敷き瓦は、かつて盛んに交易された中国で、紫禁城造営の際に使われたものと同じ窯のもの。また、土の版築柱の造形に古代からの手法を取り入れるなど、古の知恵を現代に生かし、独自の風景をつくり出すことを試みた。
● 関連トピックス
鎌倉街道沿いの旧日産社宅跡地に建設された街路型集合住宅。5つの敷地に5棟の低層レジデンスを配棟し、それらを繋ぐ街路空間を四季折々の表情豊かな樹木やさまざまな建築意匠で彩り、上質な邸宅街とすることを意図した。
大規模マンション群にありがちな単調さや均質さを払拭するため、多様な色合いを持つアースカラーの外壁タイル、オーダーメイドのロートアイアンの手摺、タイルブロック透かし積みの風防壁など素材感や風合いを大切にした、変化に富んだ材料を採用し、「散歩していて楽しい街づくり」を目指した。
● 関連トピックス
名古屋の高級邸宅地「川名山」のヒルトップに位置する集合住宅。隣には、江戸時代の心象風景を今に残す香積院が大屋根を広げ、周囲にはヨーロッパの古城を彷彿とさせる桑山美術館や並木道が広がる市内屈指の文教地区でもある。
ここで重要なことは、集合住宅でありながら広がった眺望を享受しつつプライバシーの守られた半戸外スペースの確保と捉えた。そしてそれを具現化するために、バルコニーの一部に約4帖の溜まりを設け、そのスペースをタイルブロックの透かし積みによって軽やかに覆う手法を採用した。この手法はこれまでにも、階段室やバルコニー腰壁、玄関前の風防壁などに数多く採用してきたが、半戸外スペースを積極的につくり出す大胆な試みは初めて。建築法規やコストとのバランスにおいて、かろうじて実現できた最初で最後のトライアルと考えている。
● 関連トピックス
→2011.04.07 3年目のプラウド川名山
→2009.08.19 プラウド川名山が<2009年度グッドデザインエキスポ出展デザイン>に選ばれました。
東京・吉祥寺に建つ集合住宅。文化と賑わい、そして井の頭公園や玉川上水をはじめとする自然など、魅力的な住環境を形成する要素が揃ったこの街において、いつまでも愛され続ける集合住宅を創出することを心がけた。
そこで何よりもまず自然を建物の中に引き込むために、“井の頭に佇む森の家”をコンセプトとし、軽井沢万平ホテルや星野リゾートを想起させる中庭型の低層マンションとした。武蔵野の自然をその中庭に再現することで、いつまでも愛され、くつろげる場所となることを目指した。
渋谷区松涛に建つ集合住宅。敷地周辺は江戸時代には紀伊徳川家の下屋敷があった場所であり、現在では数多くの文化施設が数多く立ち並ぶ、新旧の歴史・文化・伝統が地層のように重なり合った土地である。
その敷地に見合う「超高級低層集合住宅」を設計するにあたって、「高級」を「自然」と一体になることと捉え、光や風、眺望、音や匂いに留まらず、「自然」の一部である人間の営みとしての歴史や文化の多様な重層性を纏うことを第一に考えた。そこで、幾重にも折り重なるように設けられた石積みの塀、ガラスフェンスと美しい樹木、地層のような凹凸を持つせっ器タイル、水盤に映し込まれた透かし積みタイルブロックの照明柱など、時間の審判に耐え得るだけの存在感と、どこか懐かしさを秘めた仕上げ材を採用。それぞれの素材感を大切にしながらもあっさりとした味付けとすることで、五感に訴える空間の肌触りを醸し出すことに専心した。
現在は週末住宅として使われているが、ゆくゆくは“終の住処”として位置づけられた山荘。一年を通して湿気の多い軽井沢特有の気候の中で、高断熱・高気密で、冬でも快適な居住性が確保できる住まいが求められた。
それらへの回答として、外断熱と内断熱を併用した外壁、ペアガラスの断熱サッシュ、蓄熱床暖房、24時間気調システムなどを採用。また、これら高気密・高断熱仕様と合わせて、床下ピット内に深夜電力利用の蓄熱床暖房を仕込み、通常の半額程度に暖房コストを低減させている。
一日の大半を過ごすLDKは36帖の広さがあり、片流れの大屋根に覆われている。北側の壁面にはトップサイドライトから自然光が降り注ぎ、空間にダイナミックな自然の移ろいを映し出している。LDKの南側には12帖の屋外テラスが設えてあり、目の前に広がる雑木林を眺めながら、午後のティータイムを心置きなく楽しむことができる。
赤レンガ倉庫、外人墓地など、文明開化の面影を色濃く残す建物が周囲に散見される敷地には、古き良き横濱とモダンなヨコハマを同時に感じさせる装いが必要だと考えた。
低層部は古色蒼然としたレンガタイルとし、ロートアイアンの門扉などを配した。一方中層部は、バルコニーを内包化した“ポツ窓”の壁面構成として多少レトロな雰囲気とした。反対に最上階のペントハウスはモダンでオープンな表情とすることで、眺望を最大限に生かすことを意図した。また、従来マンションに見られるキャンティレバー型バルコニーでは徒に生活感が滲み出してしまうため、全てベイバルコニーとし、ホテルのような外観イメージに仕上げた。
エントランスホールに到るボールト状の空間には、タイルブロックの透かし積みの建築化照明を仕込み、喧騒からプライバシーに到る、僅かな結界を創出した。また、建物廻りの緑地部分には、レイランドヒノキの列植とキンメツゲ、特注タイルブロックの照明柱を設けるなど、幾層ものレイヤーを被せることで、都会の雑踏からの遊離感を演出した。
御影石の由来として有名な御影は、明治末期からの歴史を誇る日本屈指の高級住宅地。往時の石垣や既存樹を大切に生かすことで、土地のコンテクストが自然に実感できるよう計画した。
建物によって囲まれた中庭には、住吉川から疎水が導かれたかのようなランドスケープを設えた。その2層分下に位置するエントランスには、桂の植えられた光庭から自然の光と風が導かれ、光庭に面する御影石の壁面を伝わったせせらぎは、室内を通って総合カウンター前の水盤に注がれている。
外壁を構成するせっ器タイル、ロートアイアンの手摺、エントランスホール照明などに特別にデザインされた優れた職人による手づくり素材を採用するなど、高質なテイストを持つ素材の組合せにより、しっとりとした味わいを実現させた。
「飾らない豊かさ」をテーマに、都内の一等地における最上質の住まいのあり方を求めた集合住宅。
「建物と自然をいかに融合させるか」に力点を置き、建物内部に「内包された自然」を創造する提案を試みた。
「身近な緑」は住まい手や来訪者の心を癒し、生活そのものを豊かにする力を秘めている。自然環境や歴史、伝統との「つながり」の中にこそ、住み手の安心感や住み心地の良さを満たすヒントが隠されていると感じ、設計に反映させた。